一人が好き。でも寂しがりやの人生後半戦

楽しくて少し知的な生活を目指すアラフィフのブログです

掴みどころのない、でも大切な感情

西加奈子さんの文章は
そっとしておくほうが身のためだ、
と思い胸の奥底にとどめている感情を
揺り起こすので


本を手にするとき一瞬迷います
でも、また読んでしまった

恵まれた家庭に養子として引き取られた
シリアの血を引くアイという女性の物語


アメリカ人の父、日本人の母に
愛情たっぷりに育てられ
何不自由のない生活をしながらも
アイは様々ことを思い悩む


なぜ、自分は選ばれ、恵まれているのか


世の中には苦しむ人々がたくさんいて
日々、世界中で多くの人が命を落としている


そのことに自分は目を向けるべきじゃないのか


だけど、自分は無力で
同情するなんて傲慢だ…


私も毎日、天災や内戦に苦しむ人々の

ニュースを見て心を痛めるけど


所詮、何もできない無力な人間なのだから
感情移入するのはおこがましいと
思いをストップさせることが多い


だって、毎日、あちらこちらで
色んなことが起こっていて
そのすべてに思いを寄せることなんてできないから


純粋で真面目なアイは

世界で、身の回りで起きることを

うまくかわしていけずに苦しむけれど


生きづらさを抱えつつも明るい

ミナという親友を得て

成長していきます


だけど軌道に乗り始めた日々に

また辛いことが‥


そこで、力となるのは

両親やパートナーの限りない愛情


その純粋な愛情は、

読んでいる私にも注がれて


大切なことはとてもシンプルだと
気づかされます


印象的なのはラスト
アイが夜明け前に
海に身をゆだねるシーン


命を育み、奪う海


若いころ、海の中にいるのが

大好きだった私


その感覚はとても大切なものだったんだと

嬉しくなったり


久しぶりに海に行って

身を委ねたくなりました