苦しくなるほど暑い8月の終わりに
毎年8月には、戦争についてのドラマか本に触れるようにしています。
だれに言われたことでもないのだけれど、なんだか日本人としての義務のような気がするのです。
ただし、戦争を真っ向から描いたものは、残酷すぎて耐えられないので、甘いと言われるかもしれないけれど、途中で投げ出さないような内容のものを慎重に選びます。
今年は、原田マハさんの「太陽の棘(とげ)」。
戦後の沖縄で、米軍に配属された若き精神科医と、芸術の村を作り絵を描き懸命に生きていくアーティスたちとの交流の物語。
実話をもとにしたお話です。
すべてが壊されたしまったけれど、変わらず太陽がギラギラと輝く沖縄で、芸術をあきらめず、たくましく生きる人々。
彼らの集落に、芸術を愛する米軍青年医師が偶然訪れる。
会うべきして会ったとしか思えない出会い。
事実は小説よりも奇なり、と言うけれど、苦しい現実世界の中に、神様は時々こういうプレゼントを用意してくれるのですね。
沖縄の人が辛かったのはもちろんのこと、米軍の兵士たちも辛かった。
戦争はいいことなど一つもない。
食べ物がなければ生きられないことは紛れもない事実。
一方で人が人として生きていくためには、芸術・文化が欠かせない。
そのことは、これまでにも聞いたり読んだりしてきたけれど、やっと実感として心に落ちた気がしました。
苦しくなるほど暑い、8月の終わりに読むのがふさわしい本です。