ムンクの叫びが聞こえる子
小学校高学年のころだった。
テレビでムンクの絵、「叫び」の紹介をしていた。
この世の不穏なものの叫びが聞こえておののく人、みたいな解説をしていた。
そのとき母が私に向かい、「あなたは聞こえてしまう人よね…」と言い、どきっとした。
そのころ、少し早めな思春期を迎えていた私。
私という存在はなんなんだろう?
私がいろいろと考えているこの思いはなんなんだ?
私はどこから来たんだ?
という人類の本質的な問題にぶつかっていた。
実家の、やや暗く昭和らしい木造の急な階段に座って、
「私は何?」と思案していた自分を、今でもありありと覚えている。
そんなことを考えずに、楽しく暮らしていける人が羨ましいが
そんな人間だから、小説や絵画の世界にどっぷりとはまれるのかもしれない。
それに、ブログを始めてから
「もしかしたら、私みたいな面倒な人、意外と多いのかもしれない」とも思えてきた。
ムンクの絵がこれだけ評価されるのも、多くの人の心の中にぼんやりとあるものを目に見えるものとして描いているからなのだろう。
自分がなんなのか、意識とはなんなのか、という事がらの答えはそれなりに本を読んだけれど、まだ見つかっていない。